テッサータイプは3群目にダブレットを配したものです。本家カールツァイスではテッサーはウナーの前半分とプロターの後ろ半分を合わせた物という説明をしておりますが、これはツァイスのプライドからくる発言でして、光学的見地から見たらトリプレットの3枚目の凸レンズを屈折率のことなるガラス2枚の貼り合わせにしたものと言えます。
 かつてはテッサータイプのレンズを装着することが名機の条件とされ、ライカのエルマー50ミリF3.5やミノックスのコンプラン15ミリF3.5など名だたる銘玉が歴史に名を残しております。1970年代から80年代にかけてオートフォーカスのコンパクトカメラはほとんどがこのテッサータイプを採用していました。しかし、近年ではトリプレットでも十分な画質が得られる上、デジタルカメラが台頭するようになると結像素子がビグネッティング(口径食)を極端に嫌う性格上テレセントリック性に劣るテッサータイプは敬遠されるようになってきました。
 一眼レフや35ミリレンジファインダーの分野でも「単焦点レンズは大口径で」という最近の風潮によりテッサータイプは少数派になってきました。一眼レフ用では本家コンタックスのテッサー45ミリF2.8とニコンの同仕様製品がテッサータイプです。

(図3)最初のテッサー(1902年) (図4)テッサーの完成まで
引用文献:写真レンズの基礎と発展
(小倉敏布著/朝日ソノラマ刊)

(図5)(図6)トリプレットタイプ
の発展型の例。

(図5)カラーヘリア50ミリF3.5
(1952年/フォクトレンダー)
(図6)タンバール90ミリF2.2
(1935年/ライツ)

第2話:3枚玉と4枚玉

-トリプレットタイプとテッサータイプー

図1)テイラーが設計した最初のトリプレット 図2)リコーR1のテレトリプレット構成

 テイラーのトリプレット構成はやがてテッサーを生みだし、さらに種種の変形や発展型も生み出しました。実際例では張り合わせレンズを後ろだけでなく前にも配したフォクトレンダーの「ヘリア(図5)」や逆に中心の凹レンズを張りあわせにしたライカの「タンバール(図6)」など列挙にいとまがありません。
 しかし結局それらは歴史の奔流に押し流されトリプレットとテッサーの原型が21世紀の今日まで残ったというのは基本設計の優秀さの証明と言えます。

(図7)フジカクラッセ用スーパーEBCフジノン38ミリF2.6(2001年/富士フィルム)
組み立て工程での偏芯のリスクをさけるためすべてのレンズエレメントが接触するようになっており、空気間隔が極めて少なくなっています。
 このため絞りやシャッター羽根が入る隙間が無くビハインド式シャッターに絞りの役目も持たせる「絞りセクター兼シャッター」となります。今日のコンパクトカメラ用の典型的なテッサータイプの例。

 現在、ズームレンズを装着していないコンパクトカメラによく適用されているレンズ構成に「トリプレットタイプ」(3枚玉)「テッサータイプ」(4枚玉)があります。
 名前のとおりトリプレットが3群3枚構成。テッサーは3群4枚構成です。どちらも歴史は古く、トリプレットは1893年にイギリス、クック社のH.D.テイラーが、テッサーは1902年にドイツ、カールツァイスのパウル・ルドルフとE・ヴァンデルスレプが発明しました。
 写真を撮影できるように収差を十分に補正した光学系のことを「アナスチグマート」(ドイツ語で無非点収差の意味)と呼びますが、トリプレットは最小のレンズ枚数のアナスチグマートです。前から順に凸ー凹ー凸と並べるだけでザイデルの5収差(1855年/ルードヴィッヒ・フォン・ザイデル)と呼ばれる球面収差、コマ収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、像面湾曲をほぼ問題の無いレベルにまで補正できます。
 かつては像面湾曲や球面収差が多少残存し、「3枚玉は画面中帯部(中心と周辺の中間)がイマイチ」といわれていましたが近年はコンピュータ設計に加え高屈折率のガラス素材や非球面レンズの採用でF3.5程度の明るさならば一眼レフのレンズと引けをとらない画質が得られるようになっています。実際例ではニコンミニやキヤノンオートボーイFなどがトリプレットを採用しています。またリコーR1やオリンパスミューはボディの厚さを縮めるためにトリプレットの後ろに凹レンズを配してバックフォーカスを縮める「テレトリプレット」を採用しており、このクラスの35ミリコンパクトカメラの主流となりました。

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2002/09/08補足
資料)
写真レンズの基礎と発展(小倉敏布著/朝日ソノラマ刊)
ぼくらクラシックカメラ探検隊フォクトレンダー(オフィスヘリア刊/1996年)
コンタックスTシリーズのすべて(瑛出版/2001年)