ズミルックス50ミリF1.4

 1959年発売のライカ初のF1.4級大口径レンズです。
貧乏人の私には分不相応な買い物でしたが、せっかくライカM6を購入したのだから標準レンズくらいは純正が欲しくて、数年前から馴染みのカメラ店に「ボロボロでいいから格安のズミルックス50ミリが入ったら教えて!」と頼み込んでようやく手に入れた一品です。
 レンズ構成は変形ガウスタイプの5群7枚。4群6枚のガウス構成の後ろに凸レンズを1枚加えたもので、クセノン50ミリF1.5(1936年)、ズマリット50ミリF1.5(1949年)の直系のレンズです。
 レンズの名前は同じですが現行のズミルックス50ミリF1.4は枚数は同じ5群7枚でも2枚目と3枚目のバルサム張り合わせ面が空気レンズになって分離し、最後尾の6枚目と7枚目が張り合わせの色消し構成になっておりまったく新設計になっています。
 今の基準で見るとF1.4クラスのレンズとしては2枚目3枚目が張り合わせになっているあたりが時代を感じさせます。
 筆者が所有するズミルックスは製造番号が1788185という本当に最初期のロットで、さすがに写りは古典的です。
 ズミルックスくらいの銘玉ともなるとすでに定評が固まったレンズだけに筆者ごときカスの論評などアテにはなりませんが、最初期のズミルックスはピントはそこそこ来るが「色が濁る」「ハイライトがにじむ」「バックボケがガチャガチャ」とあまり良い評判は聞きません。

ズミルックス50ミリF1.4作例1
コニカヘキサーRF
F1.4、1/4000秒
フジカラースペリアリアラ
ズミルックス作例2
コニカヘキサーRF、F2.8、自動露出、フジカラースペリアリアラ

 作例はネガカラーで撮影し、スキャナーで読み取った画像ですが、色は濁るしコントラストは低いしで、レタッチにけっこう苦労しました。
 F1.4開放での作例は、まあシャープとは言えませんがモデル嬢の睫毛の1本1本がちゃんと結像しており、及第点の解像度です。しかしバックボケのタンポポはものすごい2線ボケでナンギしました。
 F2.8まで絞った作例では荒れ狂う2線ボケが納まり、なんとかおだやかな描写になりましたが、それでもモデル嬢のペンダントのボケ味はかなりクセがあります。
 発色はかなり濁りがありまして、後日リバーサルフィルムも試してみましたがあまり納得のいく出来ではなかったのでここでは御見せできません。
 F1.4クラスのレンズですが、荒れ狂うバックボケ、濁りまくった発色は何かこうキヤノン50ミリF0.95に匹敵するものを覚えました。
 貧乏人のヒガミじゃないけど、筆者の個人的な好みとしてはキヤノンPと同時発売のキヤノン50ミリF1.4の素直な描写の方が好きです。

(←構成図)
5群7枚変形ガウスタイプ
画角:45度
最小絞りf16
最短撮影距離1m
フィルター:43mm
重さ320g
発売:1959年




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