すでに時代は一眼レフへと移行しつつあった1959年の発売。このPは発売の2ヵ月後にキヤノン初の一眼レフカメラ「キヤノンフレックス」が発売されています。
キヤノンはこのころすでにマクロ撮影や望遠撮影は一眼レフにまかせるべきだと割り切っていたのでしょう。キヤノンPは基本的なボディメカニズムはキヤノンVILを引き継ぎながらもファインダーの倍率可変機能を省略し、等倍固定のファインダーに35ミリ、50ミリ、100ミリの3本のブライトフレームを内蔵し、ボディ単体で3本の交換レンズに対応するようにしました。これは正解であったと見るべきでしょう。大多数のユーザーにとってレンズは50ミリだけしか使わないし、交換レンズを購入するにしてもレンジファインダーカメラならば35ミリと100ミリくらいで、それ以上のレンズが必要ならばもう一眼レフを買うだろうということだったのでしょう。事実それは
正解だったと言えます。倍率可変光学系を省いたおかげでファインダーが明るくなり見やすくなりました。
レンジファインダーマニアというのは実際の使い心地以前に不必要なほど複雑なメカニズムを面白がる傾向があります。確かにVILのクルクル回転する倍率可変光学系はいじっていて楽しいし望遠撮影での測距精度が向上するのは事実ですが、現実に撮影に使ってみるとファインダー像は暗いし変倍ダイヤルの回転がゆるくて35ミリを使っているのにいつのまにか倍率が1.5倍に変わっていて構図が取れなかったりと不便極まりない。
レンジファインダー初心者にはこの機種くらいがバランスが取れていてオススメでしょう。大量に販売された機種なので中古市場に豊富に流通しています。
で、上述の「等倍ファインダー」ですが、これが実にすばらしい。右目でファインダーを覗きながら左目で外界を見ているとフレームの視野外まで見通せるので、スナップ撮影がすばらしく楽しいです。望遠の100ミリですら両目を開けてフレーミングできるのは快感です(同じ事を一眼レフでやったら絶対に気持ち悪くなります)。
高倍率ファインダーがすばらしいとよく絶賛されるライカM3ですら実はファインダー倍率はX0.9でした。
等倍ファインダーを採用したレンズ交換式レンジファインダーカメラはニコンS2、SP、S3、S4、キヤノンではこのPとVI。あとはかなり後年のコシナ・フォクトレンダーベッサR3くらいなもので実は案外少ない。
レンズ固定の機種ではコニカIIIAとかもありますが。
等倍ファインダーのレンズ交換式レンジファインダーでは随一の入手しやすい機種です。
ただファインダーのブライトフレームが採光式ではなくアルバダ式なのでファインダー内でハーフミラー処理された対物レンズが内反射して見栄えがよくありません。まあ価格相応の出来です。
分類:35ミリ距離計連動式フォーカルプレーンシャッターカメラ シャッター:1軸ダイヤル不回転式横走りステンレス幕フォーカルプレーンシャッター B、1−1/1000秒(Xシンクロ1/60秒以下) ファインダー:アルバダ式ブライトフレーム内蔵2重像合致式連動距離計 ファインダー倍率:等倍、35ミリ、50ミリ、100ミリブライトフレーム内蔵 パララックス自動補正 発売年:1959年 |
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