キヤノンIVSb改

 キヤノンレンジファインダーカメラの金字塔。不朽の名機と呼ばれるIVSbは1953年の発売。当時、ついに国産カメラがライカに追いついたと評判になり、ライカと一緒に使うプロも多かったといいます。しかしその翌年にはかのライカM3が発売され、追いついたと思ったところがまた大きく引き離されてしまいました。その当時キヤノンはわざわざ「ライカM3の対抗機種はこれから研究する。まだ当分は従来機種の改良を続ける。」と律儀にコメントし、公約どおり翌年にはマイナーチェンジモデルのIVSb改を発売します。
 この機種はIVSbの基本構造を保ちつつ欠点を改良した機種でシャッター速度を現代と同じ倍数系列に、シャッターダイヤルはフィルム巻き上げの度にクルクル回転する回転式ながらもダイヤルの中心に矢印が入ってフィルム巻き上げ前でも設定シャッター速度が分かるようになりました。
 おかげで「M3にはかなわないがIIIfには勝てる。」と一定の評価を得て、現在ではヴィンテージカメラとして誉れ高いカメラです。
 実際に筆者もコニカヘキサーRF購入前まではレンジファインダーカメラの主力機種としてバリバリ使っていました。何と言っても特筆すべきは倍率可変レンジファインダーの正確さで100ミリF2135ミリF3.5でも測距精度は十分です。
 しかし「現在の基準でも十分実用的か?」と言われるとやっぱり50年前のカメラです。フィルムマスクの遮光は今の基準ではお話にならず、構図に太陽を入れると隣のコマまで光線引きが出るし、ごくごくまれにフォーカルプレンシャッターがバウンドして画面の端が二重露光になったりします。何よりも、今時ノブ式巻き上げ巻き戻しはシャッターチャンスへの対応能力としては致命的です。いや、巻き上げの感触はすばらしく滑らかなのですが...。
 あくまでもクラシックカメラとして楽しみましょう。
 ちなみに日本最初のストロボシンクロ回路内蔵機種です。

分類:35ミリ距離計連動式フォーカルプレーンシャッターカメラ
シャッター:2軸ダイヤル回転式横走り布幕フォーカルプレーンシャッター
B、1−1/1000秒(Xシンクロ1/45秒のみ)
ファインダー:逆ガリレオ式2重像合致式連動距離計
ファインダー倍率:倍率可変(0.57倍、等倍、1.5倍の3段切り替え)
0.57倍時には全視野が50ミリ対応
、等倍時には全視野が100ミリ対応
1.55倍時はマグニファイヤー専用
発売年:1955年

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