ツァイス・イコン


 長野の知る人ぞ知るカメラ会社「コシナカメラ」が満を期して発売した念願のフラッグシップ機がツァイス・イコンです。
コシナは創業当初はもっぱら老舗カメラ企業の下請けとして光学部品や、完成品カメラ、レンズのOEMから事業を立ち上げ1974年には画期的な瞬間絞り込み測光のAE一眼レフ「コシナハイライトEC」を発売。1980年代には工場より産地直送!(コシナの創業者はリンゴ農家でしたのでこういう発想が生まれたのでしょう)レンズ3本(28ミリF2.8、50ミリF2、135ミリF2.8)セットで39,800円という超絶低価格の一眼レフ「コシナCT−1G」を発売するなど、従来のカメラ販売の常識に囚われない自由奔放な経営方針で、着実に大手カメラメーカーからの信用を勝ち得てきました。
しかし、肝心のブランドイメージはどうにも「知る人ぞ知る」というレベルで、どちらかと言うとシグマタムロントキナーと同様、交換レンズメーカーという印象が強かったように思います。
コニカヘキサーRFの開発スタッフは「一眼レフから撤退後、どうしてもコニカのフラッグシップを作りたかった。」と語っておりましたが、やはりカメラ製造、販売を生業とする企業にとって、最高級機種というのは一度は手がけたい夢なのでしょう。
コシナさんもコニカと同様、すでに飽和状態にある一眼レフやデジカメの市場では永久に低価格OEM路線から脱皮できず、長らくライカ以外は撤退していた空白のレンジファインダー市場に打って出たのはある意味必然と言えます。
それにはコシナの名前ではブランド力が弱いと判断し、1971年のブラウンシュバイク工場閉鎖により企業としては消滅しブランド名だけが浮いていたフォクトレンダー(Voigtlander)の権利をドイツの写真用品卸会社から購入し、まずは1999年にファインダーも距離計も無いライカスクリューマウントカメラ「ベッサL」を発売、その直後からレンジファインダーファンの期待に答えるように翌2000年には念願の距離計付モデル「ベッサR」「ベッサT」を発売、着実にラインナップを充実して行きます。そのコシナがフォクトレンダーの上位ブランドとしてカールツァイスより権利を買い取り「ツァイス・イコン」を2004年のフォトキナに出品し翌年発売しました。
この直前の2005年にコニカミノルタがヘキサーRFを生産停止し写真事業から撤退、京セラもコンタックスを始めカメラ事業からの撤退を発表し、「国産レンジファインダーカメラとツァイスレンズの危機!」とファンが浮き足立った時の発表だけに、「銀塩写真界の救世主」と持てはやされました。
きっとカール・ツァイス陣営も京セラのカメラ事業の先行きに不安を感じて早い時期からボディコンストラクターを京セラからコシナに乗り換える方針だったのでしょう。ツァイス・イコンというブランド名もフォクトレンダーがツァイス・イコンに救済合併された際に、フォクトレンダーイカフレックスの上位ブランドとして一眼レフの名称に使われていたのでヒエラルキー(階層)設定上も違和感ないです。
←角ばったボディデザインなので写真では
大きく見えますが、実際にライカと並べて
見ると、幅、高さ共に同じくらい、奥行きは
僅かに肉薄で、凹凸が少ない分持った
感触はライカより軽くて小さいカンジ。
15万円というボディ価格から考えれば
かなりの高級感と言えます。
実際に使ってみると距離計の基線長が長いので距離計の分離が良く、とてもピントが見やすい。ファインダーの透明感は特筆モノで、ライカM6以上です。
ライカはパララックス補正に伴い距離計像まで動き常にフォーカス位置が中心になりますが、ツァイス・イコンは距離計像の位置は変わりません。ここをコシナさんが気にしているコメントがありましたが、そんな瑣末な事を気にする人いるんでしょうか?そもそもツァイス・イコンの定価の3倍もするライカと比較するのは荷が重いでしょう。
ボディーカバーは最近流行のマグネシウム合金で、塗装はブラッククロームではなく昔ながらのラッカーの焼付け塗装というちょっとノスタルジーなフィニッシュ。ちなみにシルバーボディもクロームメッキではなくシルバー塗装です。ライカMPの削り出しボディやコニカヘキサーRFのチタンボディと比べると外装はそこそこの質感です。安っぽくは無いけど1960年代の国産一眼レフのあの懐かしい質感です。

コニカヘキサーRF及びライカM6と比較するとゆがみなく透明感抜群のファインダーは明らかに後発に有利です。シャッター速度ダイヤルが露出補正ダイヤルも兼ねる設計(ミノルタCLEと同じ)は評価の別れるトコロ。シャッター速度ダイヤルがボディ端にあるヘキサーRFはシャッターダイヤルが知らない間に回ってしまう経験があり、不用意に回りにくい位置にある点でツァイス・イコンの方が安心という考え方も出来ます。
不満な点は、まあ雑誌を見ても意外にレンジファインダーにモータードライブを要求する人は少ないようなので私の個人的な意見なのですが、動物写真を撮る自分としては、やっぱり外付けのワインダーは用意して欲しかったです。
(注:モータードライブのカプラーは用意されていません。外付けグリップはありますが、タダのプラスチックのムクで機能はありません。)
あと、これだけの高級機なのにシャッター速度ダイヤルの安っぽいクリック感は非常にがっかり。往年のリコーXR−7のカチャカチャしたフィーリングに似ています。ここはあと5000円高くても良いのでもう少し良い材質をおごって欲しかったです。
次は京セラからコンタックスMMマウントの権利を買い取ってコシナ製コンタックス一眼レフも出して欲しいですね。


分類:35ミリ距離計連動式フォーカルプレーンシャッターカメラ
シャッター:電子制御式縦走りメタルフォーカルプレーンシャッター
B、1−1/2000秒(オート時8−1/2000秒。Xシンクロ1/125秒以下)
測光:フィルム幕面測光式TTL中央部分測光
電池:SR−44またはLR−44が2本、またはCR1/3リチウム1本
ファインダー:採光式ブライトフレーム内蔵実像式2重像合致式連動距離計
ファインダー倍率:0.74倍ファインダーフレームは28ミリと85ミリ/35ミリ/
50ミリの3段階自動切換え。パララックス自動補正
フィルム給装:レバー式巻上げ、クランク式巻き戻し
レンズ:ZMマウント(ライカMマウント互換)
発売年:2005年

                                   2007/07/15up

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