フォクトレンダーベッサT
(ヘリア誕生101周年記念モデル)
旧フォクトレンダー社(ドイツ)のハーティンクの手により1900年に設計された3群5枚構成「ヘリア」の誕生101周年(なぜに101周年?)記念に2001年に限定発売されたコシナフォクトレンダーのベッサT限定ボディです。
オリーブドラブ色の限定色ボディに専用グリップ。同じく限定発売のヘリア50ミリF3.5、50ミリファインダー付のセットです。まあ限定色といっても所詮はプラスチックボディですのでさほどありがたみはありませんね。やっぱりレンズありきのセットでしょう。
「T」と命名されているのでひょっとしたらトリガーレバー付かと思ったら残念ながら付属のグリップはムクで巻き上げはごく普通のトップレバーです。(レリーズの金色のボタンは社外品)
ベッサTはレンジファインダーカメラでは史上初の距離計のみ内蔵し構図用のビューファインダーが内蔵されていないという異形のカメラです。
考えてみれば複数の交換レンズに対応すべくファインダーフレームを追加したのは1954年のライカM3以後の事(それ以前にもシュタインハイル社のカスカやコダック社のエクトラ、グラフレックス社のコンバットカメラなどの前例はあるが、世界中のカメラメーカーがユニバーサルファインダー内蔵に向かったのはやはりライカM3以降の事であることに異論は無いでしょう)。それ以前のレンジファインダーカメラはライカII〜IIIfにしろコンタックスI〜IIIAにしろカメラに内蔵されたビューファインダーの視野は50ミリ専用で標準レンズ以外の交換レンズを装着した場合にカメラ側の立派なファインダーはピント合わせ以外には機能せずアクセサリーシュー(今のカメラではストロボ専用ですが)にライフルスコープのような補助ファインダーを装着して使わなければなりませんでした。つまりカメラ側のファインダーを覗いてピント合わせした後にアクセサリーシューに差し込んだ補助ファインダーに覗き換えて構図を改めてし直した訳です。現代の一眼レフorデジカメ世代には想像もつかないようなスローライフ撮影だった訳です。
そんな訳で35ミリや28ミリといった広角撮影ではレンジファインダーを覗く時間が無駄だと、ピントは目測・置きピンで最初から補助ファインダーしか覗かない撮影方法が「粋」でした。
このベッサTは標準レンズ装着時にしか機能しないビューファインダーなど省いてしまい、その代わりに測距用のレンジファインダーの倍率を上げて望遠(カメラ名のTはつまりTelephoto=望遠レンズの略と見ます)側に振り、測距精度を向上するという捨て身の設計をしています。
まあ、確かに先発のベッサR、R2を見ても低倍率のファインダーで対応レンズは35ミリ、50ミリ、75ミリ、90ミリの4種のみ。たった4種類のファインダーフレームだったらそれを省いて距離計倍率を上げ、構図は補助ファインダーに任せるという「アッセンブル交換式の組み立てカメラ」と言うのもライカMとはまったく正反対の多目的カメラとしての一つの回答なのでしょう。4X5や8X10の大判カメラの思想を35ミリ判に持ち込んだカメラとも言えます。
残念ながらコシナの思考実験は一般のユーザーが使いこなすにはあまりにもストイック(禁欲的)過ぎたらしく現在は生産停止となりましたが、このような多機能化とは逆方向のシンプル化、アッセンブル組み立て方式のカメラも「自分に不要な機能は捨てて必要な機能のみ選び組み上げる」カメラも万能カメラと言えるのではないでしょうか?
28ミリ未満の超広角愛用者と、それとは逆の90ミリF2や100ミリF2、135ミリF2.8といった大口径中望遠レンズの専用ボディに良いと考えます。ただ、外部表示のTTL露出計はさすがに使いづらいですね(苦)。
分類:35ミリ距離計連動式フォーカルプレーンシャッターカメラ
シャッター:機械制御式縦走りメタルフォーカルプレーンシャッター
B、1−1/2000秒(Xシンクロ1/125秒以下)
測光:フィルム幕面反射式TTL中央部重点平均測光
電池:SR44またはLR44を2個
ファインダー:2重像合致式連動距離計
ファインダー倍率:1.5倍
フィルム給装:レバー式手動巻き上げ巻き戻しラピッドワインダー装着時は底部トリガーレバー巻上げ可。
レンズ:ライカ互換VMマウント
発売年:2001年
戻る