G-ロッコール28ミリF3.5


 この原稿をUpした2012年現在、「世界最小の銀塩35ミリAFカメラ」という、おそらく未来永劫破られないであろう記録ホルダーである名機ミノルタTC-1(1996年)。
 この高級コンパクトカメラに装備されたレンズです。
 発売当時、ミノルタでは「名機ミノルタCLE用ロッコール28ミリF2.8の再来」と宣言しており、その描写性能には期待が高まりました。
 その高評価から、このレンズは1998年にライカスクリューマウントで限定1.000本販売されました。
 しかし、当時すでに自分はリコーGR28ミリF2.8を所有していた上、F3.5のレンズに11万円を出費するのは道楽が過ぎるなと躊躇(ちゅうちょ)してしまい、とうとう買いそびれてしまいました。
 悔しかったのでせめて本家のミノルタTC−1でその描写性能だけでも堪能(たんのう)する事にします。
 レンズ構成は凸凹凸のトリプレットの前後に凹レンズを配したもので、対称型広角レンズとしては極限まで簡素化された構成です。F3.5とは言えここまで主光学系を簡素にできたのも1枚で球面レンズ数枚分の収差補正を発揮する非球面レンズの効果でしょう。
 ミノルタCLEの時代にはガラスモールド(型押し型)非球面レンズの技術がまだありませんでしたから、球面レンズのみで構成されたロッコール28ミリF2.8は口径も枚数も大きくなっていました。
 今使ってみると、枚数が少ない分内面反射が少なくすっこーんとヌケるコントラストです。構成枚数の多い一眼レフ用ズームレンズとは雲泥の差のヌケが気持ちよいです。
 絞り開放のF3.5では、これは上述のリコーGR28ミリF2.8もそうですが、周辺部はかなり光量落ちしますが、これは小口径広角レンズの宿命でしょう。さすがにF11まで絞ると光量は均一になります。
 ミノルタTC−1というと異なる直径の穴が開いた金属板を入れ替えることで絞りを変えるターレット絞りを採用したことで有名ですが、さすがにライカマウント交換レンズ版は絞り羽根数9枚の通常の虹彩絞りを採用し、TC−1の最小絞りF16に対し22まで絞れるようになっています。
 28ミリの交換レンズを持ち歩くくらいならTC−1一台を持った方がよっぽどかさばらないと思い購入したんですが、実際に使ってみると省電タイマーで起動後5分で勝手にレンズが収納されてしまい、いざというシャッターチャンスに対応できない(コンタックスTシリーズは省電タイマーが切れても止まるのは露出表示のみでレンズは出たままなのでシャッター半押しにするとリカバーし、シャッターチャンスには強い)欠点からタンチョウ撮影には向かない事がわかり(ペンタックスist-Dsでも書きましたが、筆者はタンチョウが撮れないカメラには興味が無い)、除湿庫のコヤシになってしまったトコロ、親父に「お母さんの旅行用にくれ!」と盗られてしまいました。
 母は最初安カメラだと思っていたらしいが旅行先あちこちで観光客がカメラを覗き込むので初めてカメラの価値を知ったらしく、帰ったあとで「これ、一体どういうカメラなの?」と問い詰められました。それはミノルタ創業70周年記念の限定2.500台のTC-1リミテッドだからです。
 ずいぶん贅沢な旅カメラだな。
 このカメラは撮影のときだけバッグから取り出して、ちょいと撮ったらすぐまたバッグにしまう。そういう使い方が似合うカメラです。28ミリの画角と、ヌケの良いコントラストからも風景撮影向けで極限まで荷物を減量したい山岳写真とかに向いているんじゃないでしょうか?
 
↑作例写真
阿寒タンチョウ観察センター
ミノルタTC−1、Gーロッコール28ミリF3.5
F8、自動露出、コニカカラーXJ−100


(←構成図)

画角:75°
レンズ構成:5群5枚
(非球面2枚3面)
最小絞り:F16
フィルター径:40.5ミリ
(Lマウント)
重さ:110g
(Lマウント)
発売年:1996年
(TC−1)
1998年(Lマウント)


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