現在吾輩が所有する写真レンズの中でもっとも理解に苦しむブツがこれです。何とレンジファインダーカメラ用のテレコンバーター!。レンジファインダー用リアコンバーターとしてはおそらく世界で唯一の例でしょう。恐ろしいことに距離計が連動します!!。
発売元は三協光機。「コムラー」「コムラノン」のブランドで1970年代まではレンズ専業メーカーのトップに君臨していたメーカーです。この「テレモアシリーズ」は日本国内のみならず世界的に見てもリアコンバーターの草分け的存在で、カメラメーカーがまだリアコンバーターを手がけていない時代にその有用性を提唱した歴史的意義は極めて大きいと言えます。このテレモア出現以前のコンバージョンレンズと言えばレンズ前面にフィルターのように装着するのが普通でしたが、フロントコンバーターの場合、レンズの焦点移動が起こってしまう(つまりマスターレンズでは1mなのにピント位置が20cmになったりする)欠点がリアコンバーターではほぼ解決できます。ただし、それが一眼レフ用ならばのハナシ...。
何も望遠に弱いレンジファインダーに無理してテレコン着ける理由が吾輩には見出せないのですが。ただ、特筆すべきはマウントで、このテレコンバーターはライカM/Lどちらにも装着出来るように前(レンズ側)がMバヨネットマウントで後ろがLスクリューマウントという変わった組み合わせになっています。もちろん最初からライカM−Lリングもおまけでついており、リングを前に装着すればスクリューマウントライカ(俗に言うバルナックライカ)やキヤノンやベッサーRに、リングを後ろに装着したらライカMやコニカヘキサーRFに装着出来るのです。で、リングを使わなければな、な、なんと!Mバヨネットマウントのレンズをスクリューマウントライカやキヤノンに装着出来るではないかああっ!。そう、このレンズはテレコンバーターというよりもマウントコンバーターとしてその存在意義があるのです(ちょっと強引な結論)。
でも倍率2倍だろ?。って事はズミクロン50ミリF2を装着したら100ミリF4....。マスターレンズの性格がまったく変化してしまう。そこまでしてMマウントレンズをキヤノンに付けたいか?。
などという疑問は置いといて本当に実用になるのかどうか作例をご紹介。おそらくこのレンズの作例写真が発表されるのは印刷物でもweb上でも前例が無いと思います。
とりあえず測距精度に心配ない範囲でヘキサノン35ミリF2を装着。最新の設計のレンズの方が残存収差が少なくテレコンバーター本来の性能が分かるでしょう。
まずは左側。絞りF2開放(合成F値4)。おおっと、これは見事なソフトフォーカス。あまりの写りに感動しました。これはこれでソフトフォーカスレンズとして使いたいくらい美しいボケです。合成焦点距離70ミリというのもポートレイトには手ごろだし。
ところが右側。F2.8(合成F値5.6)にするとウソみたいにハロが消えて普通の描写になる(まだ甘いけれど)。
どうやら元々球面収差の補正はF2.8まででそれ以上明るい部分は切り捨てられているようです。
ちなみにボディはコニカヘキサーRF、フィルムはエクタクロームダイナハイカラー100。
次はせっかくのテレコンなので望遠らしくキヤノン100ミリF2で挑戦!!。合成焦点距離200ミリF4!!。本当にピントが合うのかそれはっ!!。案の定キヤノンIVSbに装着したらフィルム1本全滅で頭を抱えました(バカ)。
これではこのレンズの本当の性能が分からないのでオキテ破りながらライカL−プラクチカマウントアダプターを併用してペンタックスLXに装着。当然フランジバック28.8ミリのライカ用レンズをフランジバック40ミリ以上ある一眼レフに装着したら無限大にピントが合わなくなりマクロ専用レンズになっちゃいます。
左の作例。絞り開放F2(合成F値4)ではやっぱりもわっとハロがでてソフトフォーカスになります。でもヘキサノン35ミリよりはハロは少ない。やっぱりこのレンズは望遠向きに設計されているようです。特筆すべきはピントをあわせた制服さくらちゃんと後ろの綾香ちゃん(わからねーって!)は比較的ハロが少ないのに比べて前ボケのバトルコスチュームさくらのボケが大きいこと。後ろより前のハロが大きいのは球面収差の補正過剰の症状です。なんとなくタンバールを思わせる描写です(ケガの功名)。
右の作例はF4(合成F値8)まで絞りました。うん、これはかなり使えることがわかります。ただしカメラの測距精度が追いつけばのハナシですが..。
←キヤノン100ミリF2
マスターレンズのみでの作例。
(←レンズ構成)
6群7枚
倍率:2倍
重さ:120g(実測)
発売:1967年
レンズにはズームファインダーもついて来ます。ズームとは言ってもブライトフレームが小さくなるだけで倍率は一定です。
画角はなんと80ミリから270ミリまで対応!。270ミリなんてピントが合うわけないのに御丁寧に対応します。ピント精度はもとよりパララックス補正もかなりいいかげんで270ミリなんかで撮影しても肝心の被写体がフレームアウトしてしまう有様です。
非常に変わったレンズですがとにかく使い道が無い。結局飾っておくしか役に立たないです。
こんなもん作っているから会社が潰れたんじゃないか?コムラー!。ちなみにコムラー倒産後に設計主任の阿部さんが独立して作った会社があの「アベノン光機」です。そういえばこのレンズのケースはアベノン28ミリF3.5の物と良く似ています。
付属のズームファインダー
→
御丁寧に270ミリまで対応
します。ピント合う訳ないの
に。