セレナー35ミリF3.2

 戦前は日本光学(現ニコン)から写真レンズおよびファインダーの供給を受けていたキヤノンは戦後より自社開発のレンズ群「セレナー」を発売しはじめます。セレナーとは月の海の名前(SEREN)から採った名前で社内公募で決められたそうです。1953年6月キヤノンIVSbの発売頃より「キヤノンレンズ」と命名統一しています。
 私はセレナーという語呂が結構気に入っているのでたまにコンパクトカメラでもいいからこの名前を復活して欲しいと思うのですが、雅(みやび)なワビサビとか懐古趣味をことさら嫌うキヤノンには無理でしょうねー。
 キヤノンが初の広角レンズ「セレナー35ミリF3.5」を発売したのは1950年でこれは3群4枚のテッサータイプです。このF3.2はその翌年の発売で、わずかF0.3の差なので小改良に見えますがレンズ構成を見ると4群6枚のガウスタイプでまったくの新設計であることがわかります。この構成ならばもうすこしがんばれはF2.8くらいはいくのですが現実に35ミリF2.8が発売されたのは1957年です。
 このレンズ、作例を見てもわかるように写りは古典的です。コーティングはされているので一応のカラーバランスは保たれているのですが、パステル調でどうも透明感に欠ける。ではシャープではないかというとそうでもなくて鳥の羽根のようなふんわかしたものの質感がべたっと平面的で乏しいのに輪郭線はまるでハサミで切り取ったようにクッキリでます。典型的な「解像力優先」のレンズです。
 作例を人に見せたら「何だかフォトショップで合成したみたいな写真だなあ」と言われました。本当に書割りみたいな写りですね。
 ちなみにギリシャ神話の月の女神セレネは曙の女神イオスの妹だってご存知ですか?。
 そういえばアーサ−Cクラーク氏の代表作「渇きの海」(1961年/日本ではハヤカワ文庫で出ていましたがもう絶版!)に出て来る遭難するムーンバスの名前もセレーネ号だったな(不吉な例えを..)。
ps)蛇足だがアメリカで放送された「美少女戦士セーラームーン」英語吹き替え版のうさぎちゃんの名前がセレナ(SERENA)ちゃんとゆーのもどうかと思うが...(←何でそんなこと知っているんだ、自分!!)


共通データ:キヤノンIVSb改、セレナー35ミリf3.2、F4.5、1/500秒
アグファカラーウルトラ50


←構成図(4群6枚)
ガウスタイプ
画角:64度
最小絞りF22(6枚羽根)
最短:3.5フィート
フィルター:A36
重さ:170g
発売:1951年



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