セレナー28ミリF3.5

 戦後、急速にレンズラインナップを強化してきたキヤノンカメラが1951年(昭和26年)に発売した本邦初の28ミリ超広角レンズです。日本初ということもさることながらこの当時28ミリレンズはライカのヘクトール28ミリF6.3とコンタックスのテッサー28ミリF8があるのみで、このセレナーは世界一明るい28ミリレンズでした。このため当時の報道カメラマンが競ってこのレンズを購入し、ライカに付けていたそうです。かのライカ贔屓の故木村伊兵衛氏もライカIIIaにこのレンズをつけていました。
 この当時のキヤノンのレンズ設計速度は驚異的でして、アルス刊「佐和写真技術講座2」(佐和九郎著/1954年刊)の中で「レンズを自己製造としてから、わずかの歳月でありながら、この程度のレンズを作り上げた工場は、世界中をさがしても、おそらく、他には無いらしい。この点において、キヤノン・レンズの技術陣に敬意を表しておき、今後の努力を切望する。」と絶賛されておりました。その後世界の覇者となる国産レンズの技術の片鱗がこの頃すでに見られます。
 ウラは取れていませんが、当HPの協力者である板垣和夫氏のコメントによると、このレンズは戦前に輸入していたドイツ・ショット社の硝材の在庫を使っていたらしいそうです。本当かな?。詳しい薀蓄(うんちく)をご存知の方は当方にご一報をお願いします。
 作例は、ピントはいかにもキヤノンらしく開放からキリキリとした結像をします。ピントはケチの付けどころが無い程。ただ同スペックの現代のレンズ(例えばミノルタTC−1とかリコーGR28ミリF2.8とか)と比べると非点収差が残存しているため開放時のバックボケがグルグル渦巻きになります。あまりボケ味は期待しないほうがよいでしょう。発色はネガカラーでもはっきり黄色に傾いているのがわかります。この当時のランタン系新種ガラスを使ったレンズ(ニッコール85ミリF2とか)に良く見られる傾向です。

↑作例写真
DATA:キヤノンIVSb改、F8、1/1000秒、フジカラースーパーG400

←構成図(4群6枚)
ガウスタイプ
画角:75度
最小絞りF22(6枚羽根)
最短:3.5フィート
フィルター:A36
重さ:150g
発売:1951年
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