国産Lマウントレンズとくれば絶対に外せない銘玉です。1950年、ライフ誌の専属カメラマンだったデビッド・ダグラス・ダンカン氏が朝鮮戦争の取材前に立ち寄った日本で故三木淳氏がこのレンズを使ってダンカン氏のポートレイトを撮影した際にダンカン氏はその画質に驚きすぐにニコン大井工場へ出かけてニコンSと交換レンズを携えて朝鮮に向かい、同年12月10日のニューヨークタイムズにてニコンとニッコールレンズの優秀さを伝えたことでニッコール伝説の最初の1ページが開かれたというエピソードはもうすでに語り尽くされていることです。
このニッコール85ミリF2は1948年発売で、ニコンSマウントとコンタックスマウント、ライカLマウントが用意されていました。レンズ構成は戦前型ゾナー85ミリF2そのものですが、独自に光路追跡計算を行いレンズ曲率や硝材の屈折率を変えることでオリジナルを超える解像力を得ています。ドイツ、ツァイスの機械式計算機に日本の算盤と熟練した計算嬢が勝利したと言えましょう。
画質的にはリバーサルフィルムを使うと若干黄色っぽいですがネガカラーなら心配ありません。輪郭線が太く強調される描写です。諧調がとても豊富で女性の肌の描写がとてもでふくよかです。できるならモノクロで使いたいレンズですね。
焦点距離85ミリという数値はキヤノンのレンジファインダーにはぴったりですがライカコニカヘキサーRFの場合は90ミリフレームを使う事になります。使った感想は実用上問題ないでしょう。
コニカヘキサーRFはファインダー倍率の関係上望遠の測距精度が低く100ミリではかなりピントを外しますが85ミリF2ならば問題ありません。実用上の限度はこのあたりにありそうです。
↑作例:「夏祭り」
データ:コニカヘキサーRF、ニッコールP.C85ミリF2
F2、1/60秒、エクタクロームダイナハイカラー100、ストロボ同調
(←構成図)
3群5枚ゾナータイプ
画角:28度3分
最小絞りF16
最短撮影距離3.5フィート
フィルター:48ミリ
重さ:515g
発売:1948年